研究成果

最近の研究

1. コロイド分散系の直接数値シミュレーション

我々はコロイド分散系に対して有効なメソスケールのシミュレーション手法を開発し,KAPSEL [http://www-tph.cheme.kyoto-u.ac.jp/kapsel/]として一般公開した。その後,理論的な解析の難しかった荷電コロイド系の電気泳動,レイノルズ数が高い領域(Re≦1,000)での粒子運動,溶媒に圧縮性がある場合の粒子間の運動量輸送などの諸問題に応用できるように拡張し,それらの系の基礎研究に取り組んで大きな成果を挙げた。最近では,バクテリアやクラミドモナスなどの水中を自己泳動する微生物の運動にも研究対象を広げ,それらを模した自己推進粒子の直接数値シミュレーションを行い,特異な共同運動を予見した。

2. マルチスケールシミュレーション法による高分子流動予測と成形プロセスへの応用

より高機能な高分子製品を製造するためには,成形加工の段階で高分子溶融体(高分子流体)の流動を予測し制御する必要がある.しかし,分子量分布や多様な分岐構造を有する任意の高分子流体の流動を予測することは,一般的に言って容易ではない.なぜなら,流体を構成する高分子鎖の配向やからみ合いなどのミクロスケールの構成要素の特徴が,マクロスケールの流動に対して強く影響を及ぼすからである.そのようなマクロな流動挙動と高分子のミクロな状態というスケール間の関係をより詳しく扱うために,ミクロモデルとマクロモデルを相互に組み合わせるマルチスケールシミュレーション(MSS)法の確立が強く望まれている.MS そこで我々は,MSS法を様々な成形加工プロセスに応用する研究にチャレンジしている(高分子溶融紡糸プロセスへの応用: 図1)。

図1. 高分子溶融紡糸プロセスでの4点(a)-(d)での高分子の配向の様子。赤:長い高分子, 黒:短い高分子.

3. 遊走・増殖する細胞集団のモデリング

基板上を遊走する細胞が多数集まると非常に不思議な集団運動を示すことが知られているが、この過程は傷の治癒や腫瘍の成長とも大きな関係がある。我々は,このような自発的に運動する細胞集団に対して有効な力学的モデルを構築し,自己複製・自己組織化する細胞集団が示す特異なダイナミクスのメカニズムの解明に取り組んだ(図2)。

図2. 基板上を遊走する細胞の力学モデル.青赤2つの粒子で細胞を表し,1周期の前半部分で伸張,後半部分で収縮すると同時に赤青を交互に接地して移動を実現する.